初級中級レベルのアスリートへのアドバイス
初級・中級アスリートが、トップアスリートが語るような大きなゾーンを体験することはありません。
なぜなら初級・中級アスリートは、トップアスリートのように、技術が完全に定着しておらず、本能的・自動的に体を動かせるまでに至っていないため、全てが競技に完全に没頭する状態に入れないからです。
しかし、能力と挑戦レベルに見合ったところで競技に打ち込んでいれば、少しずつマイクロゾーンと呼ばれる、小さなゾーンを体験できるようになります。
それはどんなに初心者レベルでも起こるものです。
子供のころ、鉄棒の逆あがりができるようになるまで、一生懸命、夢中で、取り組んでいた、あの状態に近いものです。
私が、レゾナンス呼吸法を、ゾーン体験メンタルトレーニングの基本としているのは、呼吸法をしているとき、私たちは、小さなゾーンを体験しやすいからです。
しかし、同時に、呼吸を「ゆっくり吐いて、吸う」を繰り返しているだけなのに、時と場合によっては、とてつもなく難しく感じることがあります。余計な思考がとめどなくあふれ、呼吸にぎこちなさを感じてしまうのです。
それは、呼吸法のトレーニングを、数年以上続けていても起こります。
初級・中級アスリートにとって大切なのは、大きなゾーン体験を目指すというよりもむしろ、平常心でプレーすることであり、小さなゾーンを、普段の練習や生活で、体験できるようになることです。
そのためにも、呼吸法や縄跳びなど、簡単にできて、ある意味、リズムに没入できるものに取り組むのが望ましいといえましょう。
トップアスリート・プロ選手向けのアドバイス
トップアスリート・プロ選手にとっては、ゾーン体験メンタルトレーニングは必須です。
なぜなら、トップレベルで戦う選手ほど、能力の差が小さく、技術が試合の結果を決めるのではなく、その日の調子や状態に結果が左右されるからです。
完封劇を演じた投手が、次回の登板では早々にノックアウトされ、トーナメントで優勝したゴルフプロが、翌週は予選落ちをするものです。
その敗因は、能力の問題ではなく、調子や状態を維持できなかったことです。
では、その日の調子や状態を感じとり、調整するには、何が必要なのでしょうか?
そう、それが普段から感じる力と微調整する力を鍛える「感覚系メンタルトレーニング=ゾーン体験メンタルトレーニング」なのです。
調子や状態が悪いときに、どんなに考えても、調子は回復しません。それどころか、考えすぎることで悪循環に落ちていくことを多くの選手は経験しているはずです。
自分の調子や状態を、様々な手段・方法で感じとり、微調整する力を養う。これがトップアスリートに求められる能力なのです。
そして、その先にゾーン体験が待っているのです。トップアスリートは、大事な場面で、余計なことを考えさえしなければ、あとは勝手に、力が発揮されるものなのです。
トップアスリートのほとんどは、このような能力を既に身につけていますが、普段から毎日、レゾナンス呼吸やイメージトレーニングを行うことで、さらに高めることができます。
なぜなら、毎日、同じことを同じようにすることで、その日その日の違いが、少しずつ感じとれるようになるからです。
調子の良いときと悪いときの差が激しいことに課題を持たれているアスリートは、ぜひメンタルトレーニング石井塾にお越しください。これまでとは違ったアプローチで、その問題を解決します。
団体競技のアスリート向け
大学ラグビーの試合前に、選手たちが円陣を組んで、みんなで涙を流しながら、お互いを鼓舞し、気持ちを高め合っているシーンを見たことはないでしょうか?
ラグビーが一番印象的ですが、サッカーや野球、バスケットボールなどでも、円陣を組んで、大声をあげたり、声を掛け合うことは、チームスポーツでは、よく行われています。
実は、これも心理学では、集団暗示とか、グループダイナミクスと呼ばれている心理メカニズムを利用した、チームの一体感を作りだし、気持ちを試合に没頭させるためのテクニックです。
暗示や催眠は、それにかかりやすい人(=被暗示性が高い人)にとっては、不安や迷いを短時間で追い出せる有効なテクニックであり、これは自己暗示とセルフトークの項で説明したとおりです。
そして、このメカニズムを集団で利用すると、暗示や催眠がさらに強力にかかることがわかっています。
集団暗示は、普段、特に練習していなくても、使える心理テクニックなので、団体競技では使わない手はありませんし、実際に、昔から使われてきています。
最近、高校野球などを見ていると、昔よりもさらに、これらのテクニックが洗練されてきているようにも思えます。ただ円陣を組んで声を出すだけでなく、みんなで一斉に天を仰いだり、ジャンプしたり。
集団暗示は、チームスポーツでは、迷いや不安を追い出す、とても有効な手段ですから、監督やコーチは、真剣にこのテクニックの活用法を考えるべきでしょう。
実際、以前(今はわかりません)、早稲田のラグビー部は、この暗示(NLP)を専門としているメンタルコーチと契約していました。競技特性を考えると、それは良い選択だと思います。
ただし、チームスポーツといっても、野球はより個人的要素の強い競技なので、高校野球はともかく、プロフェッショナルの集まるプロ野球では、あまり集団暗示はかからないのではないかと思います。
まとめると、団体競技では、集団暗示がかかる方法をメインとして、個人個人が、それぞれ呼吸法やイメージトレーニングを行うのが、望ましいと言えるでしょう。
個人競技のアスリート向け
個人スポーツでは、団体競技では有効な「集団の暗示力」がそれほど強く使えません。
チームメイトからカバーしてもらえないので、一人ひとりが、自分のメンタルコントロールをしっかりできるようになることが求められるといえるでしょう。
しかし、それが難しい。というのも、私たちの体調や気分というのは毎日違うので、どんなに「強い気持ちを持とう!」と思っても、タイミングが悪いだけで、それができなくなるからです。
なお、個人競技といっても、種類は多彩です。競技特性を考えると、大きく次のように分けられるかと思います。
A.「静」から「動」への移行がカギとなる競技
ゴルフ
野球(投手)
テニス(サーブ)
ボウリング・ビリヤード・ダーツ
弓道・アーチェリー・射撃
B.一瞬の判断と対応がカギとなる競技
テニス(ストローク)
野球(打撃・守備)
卓球
バドミントン
フェンシング
格闘技
モータースポーツ
C.体性感覚やバランス感覚がカギとなる競技
体操・新体操
スキー(滑降、ジャンプ)
スノーボード
フィギュアスケート
サーフィン
D.エネルギー配分や駆け引きがカギとなる競技
水泳
陸上競技(中長距離)
ロードレース
競輪
ボート
マラソン
あなたの競技はどれに当てはまりますか?
メンタルコーチの力量が問われるのは、このように多種多様な競技において、それぞれの競技特性を理解し、どのようにメンタルトレーニングを組み立てていくかにあります。
集団暗示や催眠のテクニックであれば、ただそれをチーム全体に浸透させ、チーム全体として大きな効果が上がるようにすれば良いのですが、個人競技の場合は、個性を理解したうえで、より強固なメンタルコントロールができるように指導しなければならないからです。
また、競技にあわせて、どのタイミングで、どのような集中法を実施するか、どのように感情をコントロールするかを考えないといけません。例えば、格闘技とゴルフでは大きな違いがあり、どこまで冷静でいたほうが有利なのかは異なります。また、選手本人の性格や傾向によっても、多少変化します。
ゾーン体験の時間や程度も異なるので、その競技に合わせたメンタルトレーニングが必要です。